二人が「同僚」であると分かっても、その会話が対等で親しいものか、形式的で上下関係の強いものかは分かりません。関係名だけでは、実際の会話に表れる距離感を十分に説明できないからです。
人間関係を対話データへ付けるときは、友人、家族、同僚といった名称と、親密さ・上下関係・形式性のような連続的な特徴を分けて記録する方法があります。
本記事は公開研究を手掛かりに、関係性アノテーションの設計を整理するものです。人間関係を会話だけから断定することを推奨するものではありません。
関係名と会話の状態は同じではない
同じ二人が、同僚であると同時に友人でもあることがあります。教師と元学生が共同研究者として働くこともあります。関係名を一つだけ選ぶと、重なりや変化が消えてしまいます。
そこで、次のような項目を別々に評価します。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 関係の種類 | 家族、友人、恋人、同僚、顧客など |
| 親密さ | 私的な情報や感情をどの程度共有できるか |
| 上下関係 | 指示、評価、決定を行う力に差があるか |
| 形式性 | 制度的・公的な場面として話しているか |
| 関係の時点 | 会話当時にどのような関係だったか |
SCRIPTSは関係性を複数の軸へ分けた
SCRIPTSは、英語と韓国語の映画脚本から会話を収集し、関係の種類に加えて、親密さ、形式性、階層性を記録したデータセットです。
「同僚だから形式的」「家族だから親密」と自動的に決めず、実際の場面ごとに軸を評価します。関係名から想定される典型と、会話に現れる状態を分離できます。
誰の視点で評価するかを決める
片方は親しいと思っていても、もう片方は仕事上の関係と考えているかもしれません。権力関係も、役職上の上下と、会話内で実際に決定権を持つ人物が一致しない場合があります。
参加者本人、第三者、研究者のどの視点をラベルにするかを明示し、可能であれば双方の回答を別々に残します。
根拠となった発話を残す
関係ラベルだけでなく、評価者がどの発話を手掛かりにしたかを記録すると、モデルが人間関係をどう推論したか検証しやすくなります。
- 呼称や敬称
- 命令・依頼・許可の表現
- 私的な話題の共有
- 冗談やからかい
- 意見の否定や訂正のしやすさ
- 発言順や会話を終える権限
一つの敬語表現だけに頼らず、複数の根拠を組み合わせます。
現実の対話では参加者への質問票が必要になる
映画脚本では、物語設定から人物関係を確認できます。現実の録音では、会話だけから正しい関係を判断できないことがあります。
収録時に、知り合ってからの期間、役職、会話外での関係、普段の連絡頻度などを本人へ尋ね、公開時には匿名化した範囲で付随情報を残す方法が考えられます。
RESEARCH DATASET NOTE
関係性を含む対話データの設計をご相談いただけます
株式会社イングクラウドでは、話者条件の設計、質問票、対話収録、親密さ・上下関係・形式性の複数人評価まで整理します。
