「あとで話そう」という一言は、親しい友人同士なら軽い約束でも、上司から部下へ向けられれば緊張を生むかもしれません。会話の意味は、言葉だけでなく、誰と誰が話しているかによって変わります。
AIが会話を適切に解釈するには、話者の関係性、親密さ、上下関係、場面を理解する必要があります。しかし、人間関係は名札のように会話へ書かれているわけではありません。
関係性は会話の外側にある情報
恋人、友人、同僚、上司と部下、店員と顧客では、同じ依頼や断り方でも受け取られ方が異なります。敬語だけで上下関係を判断できるとは限らず、冗談、呼び方、発言権、話題の共有範囲など複数の手掛かりが必要です。
SCRIPTSは映画の会話から関係性を集めた
SCRIPTSは、英語と韓国語の映画脚本から二者間の会話を抽出し、関係性を付けたデータセットです。最終的に1,147の対話が収録され、恋愛、家族、友人、職業上の関係などを扱っています。
関係の名称だけでなく、親密さ、形式性、階層性という観点も付けられています。「同僚」という同じ関係でも、親密な対等関係と、形式的で上下のある関係を区別できます。
関係名を親密さ・上下関係・形式性へ分解する
友人、同僚、家族という名称だけでは、会話時の距離感は決まりません。同僚であり友人でもある二人や、親密だが上下関係のある二人もいます。
関係の種類とは別に、親密さ、上下関係、形式性を評価し、誰の視点による判断なのか、どの発話が根拠になったのかを残します。
関係性は一つに固定できない
同じ二人が、同僚であり友人でもあることがあります。大学教員と学生だった二人が、共同研究者になることもあります。関係は時間と場面によって変化するため、一組の話者へ一つのラベルを恒久的に付ける設計では足りません。
映画の会話と現実の会話は違う
脚本には関係性を示す台詞が多く、場面も整理されています。一方、現実の会話には省略、割り込み、共有知識が多く、録音だけでは関係性を確認できません。実際の対話を収集する場合は、参加者への質問票や、関係が形成された期間などの補助情報が必要です。
日本語では敬語だけに頼れない
- 社内外で敬語の使い方が変わる
- 親しい間柄でも丁寧語を使う人がいる
- 肩書と実際の発言力が一致しないことがある
- 年齢、所属、場面が呼称へ影響する
- 方言や役割語が人物像の推定に影響する
役職と会話上の発言力は一致しない
組織上の役職が上でも、特定の議題では専門家である部下が結論へ強い影響を持つことがあります。発言順、依頼の方向、話題を始める人、結論をまとめる人など、会話全体の構造から立場を分析します。
制度上の役割と、実際の会話で観察された影響力を別のラベルにすると、AIが何を推論しているのかを区別できます。
複数人会話では発話の宛先も必要になる
三人以上の会話では、話者IDだけでは「誰が誰へ話したか」が分かりません。呼び掛け、直前の質問、視線、身体の向き、返信関係を使って宛先を記録します。
割り込みや相づちの重なりも、人間関係や発言権を示す情報です。個別音声と映像を同期して残すことで、文字起こしだけでは失われる会話構造を扱えます。
データ制作では関係性の根拠も残す
「上司と部下」というラベルだけでなく、どの発話や場面からそう判断したか、評価者がどこで迷ったかを記録すると、モデルが表面的な敬語だけを覚えていないか検証できます。
RELATIONSHIP-AWARE DIALOGUE DATA
関係性を含む対話データをご相談いただけます
話者条件の設計、ロールプレイ収録、関係性・親密さ・上下関係のアノテーションまで整理します。
