外注してもAIを入れても楽にならない理由|絡まった業務を解きほぐすところから始める

人手が足りず、日々の業務が逼迫している。そこで、作業の一部を外注したり、AIを導入したりして負担を減らそうと考える会社があります。

ところが、実際に始めてみると、外注先からの質問対応、処理できなかった案件の確認、AIが出した結果の修正などが社内へ戻ってきます。作業そのものは減ったはずなのに、管理する仕事が増え、思ったほど楽になりません。

このような場合、外注先やAIの性能だけが問題とは限りません。そもそも現在の業務が、複数の手順、判断、例外、担当者の経験によって、スパゲッティのように絡まっていることがあります。

必要なのは、新しい手段を選ぶ前に、現在の業務を解きほぐすことです。

忙しい会社ほど業務を整理する時間がない

業務が整理されていないのは、担当者の能力が低いからではありません。顧客からの要望、社内ルールの変更、システムの制約、過去のトラブルへの対応が長年にわたって追加されると、当初は単純だった仕事も複雑になります。

  • 特定の顧客だけ処理方法が異なる
  • 月末や繁忙期だけ別の確認が必要になる
  • Excel、メール、チャット、基幹システムを行き来する
  • 担当者の経験で入力内容や対応方法を変えている
  • 問題が起きたときだけ管理者へ確認する
  • なぜ行っているのか分からない作業が残っている

処理に追われているため、立ち止まって全体を整理する時間もありません。結果として、「時間がかかっている入力作業だけ外へ出そう」「届いたメールをAIに処理させよう」と、目につきやすい一部分から改善を始めることになります。

一部分だけ外注すると、例外が社内へ戻ってくる

外注しやすいのは、入力と処理方法が明確な定型作業です。しかし、実際の業務には、必要な情報が欠けている、書式が違う、顧客ごとの条件がある、過去の経緯を知らなければ判断できないといった例外があります。

正常に処理できる案件だけを外注し、例外を社内へ戻すことはできます。ただし、切り分け方を設計しないまま始めると、次のような仕事が新たに発生します。

  • 外注できる案件と社内で処理する案件の振り分け
  • 外注先から届く質問への回答
  • 判断できなかった案件の引き取り
  • 成果物の確認と差し戻し
  • 社内システムへの再入力
  • 外注先と社内の進捗を合わせる管理

作業量が多少減っても、社内担当者が外注先と社内業務の間に立つ「翻訳者」のような役割を担い続けます。外へ出した工程と社内に残した工程のつなぎ目が増え、その管理に時間を取られることもあります。

AIを導入しても同じことが起きる

AIを導入する場合も構造は同じです。正常な書類や典型的な問い合わせは処理できても、欠損、曖昧な表現、独自ルール、複数の条件が絡む判断は残ります。

AIが全体の80%を処理できたとしても、残り20%について、どこで止まったか、誰が確認するか、何をもって完了とするかが決まっていなければ、期待したほどの改善にはなりません。

次のような状態になると、人はAIの出力を毎回最初から調べ直すことになります。

  • AIが処理できなかった理由が記録されない
  • 人が修正した内容が次回の処理へ反映されない
  • AIの確信度にかかわらず全件を人が確認する
  • 誤りが起きた場合の責任者と対応方法が決まっていない
  • AIへ渡す前後に手作業で形式を整えている

人の判断を「AIができなかった残り」として扱うのではなく、最初から業務工程の一部として設計する必要があります。AIが候補を出し、人が承認するのか、一定条件だけ人へ回すのか、人の修正をどこへ記録するのかまで決めて初めて、AIと人が一つの業務としてつながります。

最初に「何を外注しますか」と聞かない

作業を受託する会社は、依頼された業務について、件数、納期、作業方法、納品形式を確認するのが一般的です。しかし、依頼する側の業務がまだ整理されていない場合、その質問だけでは十分ではありません。

例えば「届いた書類をスプレッドシートへ入力したい」という相談があったとします。しかし、本当に実現したいことは入力そのものではなく、次のいずれかかもしれません。

  • 請求漏れを防ぎたい
  • 審査が必要な案件だけを見つけたい
  • 顧客へ処理状況を知らせたい
  • 月末の集計を早く終わらせたい
  • 担当者にしか分からない状態をなくしたい

目的が分かれば、書類の全項目を入力する必要がない場合があります。先に書類を分類した方がよいこともあれば、外注より社内システムを修正する方が適切なこともあります。

そこで、作業内容を決める前に「そもそも何を実現したい業務でしたか」と確認することが重要になります。

業務を解きほぐすとは何をすることか

業務を解きほぐすというと、大規模なコンサルティングや詳細な業務フローの作成を想像するかもしれません。しかし、最初から完璧な図を作る必要はありません。

  1. その業務の目的を確認する
  2. 何を受け取り、最終的に何を作るのかを特定する
  3. 現在の作業を実際の順番に並べる
  4. 判断が必要な箇所と判断者を見つける
  5. 例外の種類と、おおよその発生頻度を確認する
  6. 重複している作業や、現在は不要な作業を外す
  7. 人、AI、システム、外注先の担当範囲を決める
  8. 質問、差し戻し、承認の経路を決める
  9. 小規模に試し、想定外の例を記録する
  10. 記録した例外を作業仕様へ反映する

重要なのは、きれいな業務フローを作ることではなく、どこで判断が発生し、何が原因で処理が止まり、誰がその問題を解決しているのかを見えるようにすることです。

人、AI、外注先を工程ごとに配置する

業務を整理すると、「全部AI」「全部外注」「全部社内」という分け方ではなく、工程ごとに適した担当を配置できます。

工程 担当例 処理内容
書類の受領 システム ファイルを保存し、受付番号を発行する
書類の分類 AI 書類の種類と処理先を推定する
定型項目の抽出 AI・OCR 日付、金額、名称などの候補を出す
抽出結果の確認 外注スタッフ 原本と候補値を照合し、誤りを修正する
例外判断 社内担当者 契約条件や過去の経緯を踏まえて判断する
完了処理 システム 登録、通知、データ保存を行う
失敗理由の記録 外注スタッフ・社内担当者 処理できなかった原因を分類する
仕様の更新 業務管理者 繰り返し発生する例外をルールへ反映する

この設計なら、人が担当する工程もシステムの一部として扱えます。人にも入力、判断基準、出力、次の受け渡し先を定めることで、属人的な対応を減らせます。

例外処理はなくすのではなく管理する

すべての例外を事前に洗い出すことは困難です。実際に業務を動かして初めて分かる例もあります。そのため、例外が起きない完璧な仕様を目指すより、例外が起きたときの処理方法を決めておく方が現実的です。

  • どの条件で通常処理を止めるか
  • 誰へ確認を依頼するか
  • 確認に必要な情報を何とするか
  • 回答が来るまで案件をどこに置くか
  • 判断結果をどのように記録するか
  • 同じ例外が繰り返されたら、いつ仕様へ追加するか

繰り返し発生する例外は、もはや例外ではありません。記録を蓄積し、通常のルールへ取り込むことで、社内へ戻る案件を徐々に減らせます。

外注やAIを使いやすい会社は業務を説明できる

外注やAIを上手に使える会社は、導入するサービスを選ぶ前に、自社の業務をある程度構造化できています。

  • 何のための業務か
  • どのような情報を受け取るか
  • どの条件で処理方法が変わるか
  • どの状態になれば完了か
  • どこまでの誤りを許容できるか
  • 例外を誰が判断するか

これらが整理されていれば、外注会社へ作業を説明しやすく、AIへ与える指示も作りやすくなります。成果物の検収基準も明確になります。

一方、本当に支援を必要としているのは、業務が整理できないほど忙しく、何をどこから切り出せばよいか分からない会社です。しかし、一般的なBPOサービスは、作業内容と仕様が決まっていることを前提としているため、その前段階から相談できる相手は多くありません。

仕様が決まっていない状態から話を始める

株式会社イングクラウドへ寄せられる相談も、最初から作業仕様が完成しているとは限りません。「この作業に時間がかかっている」「担当者しか処理できない」「一部を外へ出したい」といった状態から、現在の流れと目的を確認することがあります。

話を整理した結果、最初に想定していた部分とは別の工程を切り出した方がよい場合もあります。外注せず社内に残すべき判断や、先に変更した方がよい運用が見つかることもあります。

業務を引き受けることだけがBPOではありません。何を人が担当し、何をAIやシステムへ任せ、どの判断を社内に残すのかを整理することも、継続して運用できる業務を作るための重要な工程です。

外注かAIかを決める前に目的へ戻る

絡まった業務の一部だけを切り取り、外注先やAIへ渡しても、残った工程とのつなぎ目で新しい負担が生まれます。問題は、外注かAIかという手段の選択だけではありません。

まず、何を実現したい業務なのかを確認する。そのために現在行っている作業、判断、例外を解きほぐす。そのうえで、人、AI、システム、外注先の役割を決めます。

業務が整理されて初めて、外注やAIは単独の道具ではなく、一つの業務を構成する仕組みとして機能します。

BUSINESS PROCESS & BPO SUPPORT

整理されていない業務についてもご相談いただけます

株式会社イングクラウドでは、作業手順が完成していない段階でも、現在の業務と実現したい目的を確認し、人が担う工程、外部へ切り出せる工程、社内に残す判断を整理します。内容を確認したうえで、当社で対応可能な範囲と進め方をご提案します。

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