大量のデータ入力や画像収集を複数人で処理するとき、総件数を人数で割り、最初に一人分の担当件数を決める方法があります。1万件を100人で処理するなら、一人100件ずつ配るという考え方です。
計算上は公平で、管理もしやすそうに見えます。しかし当社では、作業者の処理能力が分からない段階で全件を配ることはほとんどありません。まず一人10件程度を配り、完了した人から次の10件を受け取れるようにします。
この方法では、正確で速い人が自然に多くの件数を処理します。反対に、作業が遅い人や品質が安定しない人の手元には、大量の未処理データが残りません。
重要なのは、単に早い者勝ちにすることではありません。提出された成果物を同時に検品し、問題があれば次の件数を配る前に止めることです。少量配布と検品を組み合わせることで、件数配分そのものが納期管理と品質管理になります。
全件を均等に配ると、最後に遅い人を待つことになる
作業を始める前には、誰が一時間に何件処理できるか、どの程度の精度で作業できるかは分かりません。同じ説明を受けても、処理速度や成果物の品質には大きな差が出ます。
それにもかかわらず最初に担当件数を固定すると、速い人は早々に100件を終え、遅い人の手元には何十件もの未処理分が残ります。案件全体としては十分な人数がいるのに、最後の数人が終わるまで納品できない状態になります。
納期が近づいてから未処理分を回収し、別の作業者へ配り直すこともできます。ただし、その時点で初めて遅れに気づいた場合、再配分された側にも処理する時間がありません。元の担当者がどこまで作業したのかを確認し、重複を除き、データを再整理する管理工数も発生します。
一人10件ずつの追加配分なら、速い人は作業を終えるたびに次の10件を処理できます。遅い人が抱えるのは原則として最初に受け取った小ロットだけです。作業者を急かさなくても、全体の処理能力が高い人へ件数が寄っていきます。
10件という単位には、品質を早く確認する意味もある
少量配布は、進捗だけでなく品質の面でも有効です。仮に作業者が仕様を誤解していた場合、最初から100件を渡していると、同じ間違いを100件分作ってしまう可能性があります。
最初の10件を提出した時点で検品すれば、誤解している箇所を早期に見つけられます。修正方法を伝えたうえで次の10件を配ることもできますし、案件との相性が合わなければ、その人への追加配分を止めることもできます。
当社では、作業の進行と検品を別々の工程にしません。作業者が提出している横で検品を進めます。これにより、次のような問題を小さいうちに止められます。
- 必須項目を同じ解釈で間違えている
- 対象外のデータを処理している
- 入力形式やファイル名が統一されていない
- 判断に迷った箇所を自己判断で処理している
- 速度を優先しすぎて確認工程が抜けている
本番終了後に全件検品して問題を発見しても、すでに不良品が大量生産されています。作業者が離脱していれば修正を依頼できず、別の人が最初からやり直すことになります。
検品は、完成品を最後に選別するだけの工程ではありません。次の作業を配ってよいか判断するための工程でもあります。
処理能力に応じた配分へ自然に変わっていく
一律に10件ずつ配り始めても、時間がたつにつれて作業者ごとの処理件数には差がつきます。短時間で正確に終えた人は何度も追加分を受け取り、ゆっくり作業する人は少ない件数にとどまります。
これは、管理者が最初から優秀な作業者を見抜いて大量に任せているわけではありません。実際の成果を確認しながら配分した結果として、正確で速い人に件数が集まります。
作業者にとっても、処理しきれない件数を一度に抱えずに済みます。追加分を受け取らなければ、現在の小ロットを終えたところで作業を終了できます。案件側も、担当件数だけ確保して連絡が取れなくなる人や、納期直前に未処理分を返す人の影響を小さくできます。
このように、共通の作業群から完了した人が次の仕事を受け取る仕組みは、Work Queueと呼ばれます。また、一人が同時に抱える未完了件数を制限する考え方は、WIP制限に近いものです。
用語を導入することが目的ではありません。誰に何件を任せるかを事前に固定せず、実際の処理状況に合わせて仕事を流すことが重要です。
速さだけで次の10件を渡すわけではない
早く提出した人へ無条件に追加配分すると、確認を省いて件数だけを増やす人が有利になります。そのため、追加配分の判断には検品結果が必要です。
見るべきなのは、単純な一件当たりの処理時間だけではありません。
- 仕様どおりの成果物を安定して提出しているか
- 同じミスを繰り返していないか
- 例外を通常処理へ混ぜていないか
- 必要な確認を省略していないか
- 案件で想定した時間内に処理できているか
必要以上に時間をかけ、求めていない品質まで作り込む人へ大量に配ることも適切ではありません。一件5分を想定した作業に15分かけていれば、成果物が丁寧でも、本人が得られる時間当たりの報酬は下がります。業務委託では一件当たりの単価が変わらないため、不満を持って離脱する可能性も高くなります。
大量BPOで頼りになるのは、ただ速い人でも、ただ丁寧な人でもありません。求められる品質と作業工程を理解し、その範囲内で正確さと速度のバランスを取れる人です。小ロット配布と同時検品によって、その人を本番の早い段階で見つけられます。
例外は抱えさせず、通常作業から切り離す
10件の中に判断の難しい例外が含まれていると、作業者はそこで止まります。質問への回答を待っている間は次の件数へ進めず、管理者にも質問が集中します。
そこで、通常の基準で処理できないものは「例外」として返してもらい、例外処理の担当者へまとめて回します。一般の作業者は、例外の理由を長文で説明したり、その場で正解を考えたりする必要はありません。
通常作業と例外処理を分けると、通常作業者の処理速度を保ったまま、判断が必要なものだけを経験のある担当者へ集められます。作業者の技能に応じて仕事を振り分けるこの考え方は、Skills-based Routingとも呼ばれます。
ただし、例外率が高すぎる案件では、配分方法だけを工夫しても解決しません。多くの作業者が数件ごとに止まるなら、フィジビリへ戻り、仕様や作業画面、対象データの切り分けを見直す必要があります。
小ロットを細かくしすぎても管理工数が増える
一件ずつ配れば最も細かく管理できますが、配布と回収の回数が増え、作業者も次の仕事を受け取るたびに画面を操作しなければなりません。反対に、一度に100件を配れば管理は楽でも、滞留と品質問題が大きくなります。
適切な単位は、作業時間と誤りが見つかったときの損失から決めます。一件数分程度の定型作業なら10件単位、処理に時間がかかる仕事なら数件単位というように、最初の検品結果が返るまでに作りすぎない量へ区切ります。
本番初期は小さく配り、品質が安定した作業者には一回の配布数を増やす方法もあります。ただし、納期まで長いからといって、何日分もの件数を一度に抱えさせる必要はありません。未完了の仕事がどこにあるか分かる状態を保つほうが、案件全体を調整しやすくなります。
件数配分は、作業を渡すだけの事務ではない
大量案件の管理では、募集人数をそろえることが重視されがちです。しかし、同じ100人を集めても、最初に全件を固定配分するか、小ロットで流動的に配るかによって、納期と品質は大きく変わります。
一人10件ずつ配り、終わった人へ追加し、提出と同時に検品する。品質が安定した人へ件数を寄せ、例外は別の担当者へ送る。この流れができていれば、管理者が一人ずつ催促しなくても、案件は処理能力の高い作業者を中心に進みます。
作業者を増やすことよりも、未処理の仕事を誰の手元に、何件置くかを設計する。大量BPOでは、この件数配分が納期管理、品質管理、作業者の見極めを同時に担っています。
BPO WORK ALLOCATION
大量処理に合った作業配分と検品工程を設計します
株式会社イングクラウドでは、フィジビリによる処理速度の確認、小ロットでの件数配分、作業中の検品、例外処理の分離まで、納期と品質を両立する業務運用をご提案します。
