「議論を攻撃する」「時間を浪費する」「問題を抱える」。日常的に使われる表現ですが、攻撃、浪費、抱えるという動作を文字どおり行っているわけではありません。
AIが比喩を理解するには、単語の辞書的な意味と、その文脈で使われている意味の違いを判断する必要があります。VUA Metaphor Corpusは、文章中の語を一つずつ確認し、比喩的な使用を記録したデータです。
本記事はVUA Metaphor Corpusを用いた2018年の共有タスクを中心に紹介します。比喩の判定には理論や注釈基準による違いがあります。
今回取り上げる論文
A Report on the 2018 VUA Metaphor Detection Shared Taskは、VUA Metaphor Corpusを共通データとして複数のシステムを比較した共有タスクの報告です。
文章全体ではなく単語単位で判定する
一つの文章に、文字どおりの語と比喩的な語が混在することがあります。そのため、「この文章は比喩である」と一括分類するのではなく、どの語が比喩的に使われているかを単語単位で記録します。
文脈上の意味と基本的な意味を比べる
比喩判定では、対象語がその文脈で何を意味するかを確認し、より基本的・具体的な意味があるかを調べます。二つの意味が異なり、比較によって理解できる場合、比喩的使用として扱います。
例えば「主張を支える」の「支える」は、物理的に物を下から保持する意味と関係していますが、文中では主張へ根拠を与える意味で使われます。
複数ジャンルを含む理由
比喩の使われ方は、会話、ニュース、学術文書、小説などで異なります。詩的な文章だけでなく、日常会話や説明文にも慣用的な比喩が含まれます。
特定ジャンルだけで学習すると、別の文章領域で比喩を見落とす可能性があります。
明確な比喩だけが対象ではない
「人生は旅だ」のように目立つ比喩だけでなく、「計画を進める」「価格が上がる」のように日常化した表現もあります。評価者が比喩だと感じる印象だけに頼らず、共通の判定手順が必要です。
日本語で作る場合の論点
- 形態素解析の単位と人が囲む単位をそろえる
- 複合語や慣用句をどこまで一まとまりにするか
- 辞書に載った意味と新しい用法をどう区別するか
- 省略された主語や目的語を文脈から確認する
- 評価者へ判定手順と練習問題を用意する
データ制作で参考になる点
抽象的な「比喩らしさ」をそのまま尋ねず、文脈上の意味、基本的な意味、両者の関係という判断手順へ分解しています。主観的な言語現象を扱うときの仕様設計として参考になります。
FIGURATIVE LANGUAGE DATA
比喩や言外の意味を扱う日本語データをご相談いただけます
判定基準、練習問題、単語・句単位のアノテーション、複数評価者による不一致確認まで整理します。
