共感的な返答は、単に「大変でしたね」と言えば成立するものではありません。相手の状況を質問する、言葉を言い換えて確認する、感情を受け止める、情報を示す、行動を提案するなど、会話の段階に応じた方法があります。
ESConvは、悩みを話す人と支援する人の会話を収集し、支援側の発話へ応答方略を付けたデータセットです。
ESConvは研究用の感情支援対話です。医療診断や専門的な心理支援を代替するデータではありません。
今回取り上げる論文
Towards Emotional Support Dialog Systemsは、2021年のACL-IJCNLPで発表されました。研究チームは感情支援対話という課題を定義し、ESConvを構築しました。
相談者役と支援者役に分かれて会話する
参加者は、悩みを話すhelp-seekerと、それを支援するsupporterに分かれて対話します。公開リポジトリの現行版には1,300件の会話が収録されています。
話題には、落ち込み、交際相手との別れ、仕事上の問題、友人関係、学業上の負担などが含まれます。
支援者へ事前に学んでもらう
自然な会話を集めるだけでは、効果的な支援例が十分に得られるとは限りません。そのため、支援者役には心理支援の考え方をもとにした教材を提示し、会話の進め方と応答方法を学んでもらっています。
これは、参加者を集めればデータが完成するのではなく、目的に合う応答を作れるよう事前教育が必要な例です。
支援方法を8種類に分けた
- 質問する
- 言い換え・要約をする
- 相手の感情を言葉にして返す
- 自分の経験を伝える
- 肯定し、安心させる
- 提案する
- 情報を提供する
- その他
支援者の各発話へ方略を付けることで、AIは返答文だけでなく、会話のどの段階でどの方法を選ぶかを学習できます。
会話中と終了後に評価を集める
ESConvでは、相談者から会話中のフィードバックを得る仕組みと、会話後に感情の強さや満足度を確認する仕組みを設けています。文章が自然かどうかだけでなく、支援を受けた側がどう感じたかを品質確認に利用します。
共感的に見える文章と役に立つ支援は同じではない
流暢で優しい文章でも、相談内容を理解していない、同じ励ましを繰り返す、早すぎる提案をするといった問題があります。共感性、関連性、支援方略、利用者の変化を分けて評価する必要があります。
日本語で作る場合の論点
- 相談内容のセンシティブさと参加者保護
- 支援者へどの程度の事前教育を行うか
- 共感と助言をどのように区別するか
- 危険な相談を専門窓口へつなぐ基準
- 個人情報や実体験を公開データへ残さない方法
EMOTIONAL SUPPORT DIALOGUE
共感応答を含む対話データの設計をご相談いただけます
対話シナリオ、参加者教育、ロールプレイ収録、応答方略のアノテーション、人手評価まで整理します。
