「えーと」を消す前に――フィラーや言いよどみを残した日本語話し言葉コーパス

一般的な書き起こしでは、「えーと」「あのー」、語の繰り返し、言い直しを削ることがあります。しかし、話し言葉を研究するデータでは、それらも発話の一部です。

話者が考える時間を稼いだのか、表現を探しているのか、誤りを直したのか。完成後の文章だけに整えると、その過程は失われます。

本記事は公開されているコーパス情報の紹介です。株式会社イングクラウドが当該コーパスの構築へ関与したことを示すものではありません。

今回取り上げるコーパス

日本語話し言葉コーパス(CSJ)は、国立国語研究所などが構築した大規模な日本語音声コーパスです。第9刷には661時間、3,302講演、752万語の音声と転記が収録されています。

読みやすい転記と音声の細部を残す転記がある

CSJは、表記を統一した漢字仮名交じりの転記と、実際の発音の細部を表す片仮名転記を提供しています。研究目的によって、人が読む文章と音声現象を分析する表現を使い分けられます。

フィラーは単なる削除対象ではない

フィラーは、話者が発話権を保持する、次の表現を探す、難しい質問へ答える、話題を切り替えるといった場面に現れます。発生位置、長さ、前後の沈黙を残すことで、対話AIが待つべきか応答すべきかを考える材料になります。

整文と研究用転記を分ける

用途 扱い
議事録・記事 フィラーや不要な繰り返しを削り、読みやすくする
音声認識評価 実際に発声された内容との対応を残す
会話研究 沈黙、伸ばし、言い直し、途中語を時間情報付きで記録する

日本語音声データを作る場合の論点

  • 何をフィラーとして扱うか一覧を作る
  • 語の一部だけ発した場合の表記を決める
  • 言い直す前と後の範囲を対応付ける
  • 無音と息継ぎを区別する
  • 整文版を作っても原転記を残す

データ制作の実務で参考になる点

同じ音声から、納品用途別に複数の転記を作れる設計です。最初に情報を削ると復元できません。まず音声に忠実な層を作り、必要に応じて整文や形態素情報を追加する方が再利用しやすくなります。

RESEARCH DATASET NOTE

フィラー・言い直しを残す日本語音声転記に対応します

研究目的に合わせ、忠実転記、整文、発話区間、言いよどみや自己修正のアノテーションを設計します。

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