Amazon Mechanical Turk終了後の代替サービスを調べた|研究参加者・データ収集

海外の研究論文を読んでいると、研究参加者の募集やデータ作成にAmazon Mechanical Turk(MTurk)を使ったという記述をよく見かけます。アンケートへの回答、オンライン実験、文章の評価、画像分類など、人に依頼できる作業を小さなタスクとして公開するサービスです。

そのMTurkが、2026年9月30日に終了します。Amazonの案内では、同日以降は新しいタスクを提出できなくなり、未提出のタスクは失効するとされています。

MTurkを使っていた研究者は、別の募集先を探さなければなりません。ただ、MTurkで何をしていたかによって代替先は変わります。アンケートの参加者を集めるのか、画像へラベルを付けてもらうのか、日本語話者に音声を収録してもらうのかは、同じクラウドソーシングではありません。

そこで、研究参加者募集とデータ作成の両方から、MTurk終了後に使えそうなサービスを調べました。

2026年9月14日確認
サービスの対象国、登録者、料金、利用条件は変更されることがあります。利用時には、本文中に掲載した公式サイトで最新情報を確認してください。

MTurkは研究でどのように使われてきたか

MTurkでは、依頼者がHITと呼ばれるタスクを公開し、条件に合うワーカーが作業します。研究者はQualtricsなどで作った外部アンケートへ誘導したり、MTurk上で画像分類や文章作成を依頼したりできます。大量の人を短期間で集められ、大学内の学生だけを対象にするより年齢や職業の幅を広げられることも、利用が広がった理由でした。

一方で、MTurkは研究参加者募集に特化したサービスではありません。誰を対象にするか、説明を理解したか、同じ人が過去の類似研究に参加していないか、回答をどこまで信用するかは、研究者が自分で設計する必要がありました。

問題はMTurkだけではなく、依頼方法にもある

MTurkでは以前から、設問を読まない回答、属性の偽装、重複参加、VPNを使った地域の偽装、ボットなどが問題になっていました。報酬がタスクごとに支払われるため、丁寧に考えるよりも短時間で数をこなす方が、ワーカーにとって有利になる場合もあります。

生成AIの普及後は、自由記述を本当に本人が書いたのかも分かりにくくなりました。2023年に公開されたEPFLの研究では、MTurkで医学論文の要約を依頼し、提出された46件をキーストローク記録と文章判定で分析しています。その結果、33~46%がLLMを使って作られたと推定されました。

これはMTurk上の全作業を集計した数字ではなく、文章要約というLLMを使いやすいタスクの結果です。それでも、人間の反応や判断を集めたつもりが、実際には生成AIの回答が混ざる問題をよく表しています。LLMの出力を人に評価してもらう研究で、その人が別のLLMへ判断を任せていたら、研究の前提まで変わってしまいます。

代替サービスへ移れば、この問題がすべて解消するわけでもありません。不特定多数に短い説明を提示し、出来高で作業してもらう方式では、説明の理解、作業環境、生成AIの利用、例外時の判断を完全には管理できません。サービスを選ぶことと、研究に使えるデータを集めることの間には、まだかなり作業があります。

MTurkの代替候補を用途別に整理した

サービス 主な用途 向いている研究・作業 確認しておきたい点
Prolific 研究参加者募集 アンケート、心理・行動実験、HCI、AI回答の人手評価 米国・英国・欧州の参加者が中心。日本人を必要数集められるか事前確認が必要
CloudResearch Connect 研究参加者募集 オンライン調査、行動研究、米国の参加者募集 対象地域や属性条件によって集めやすさが変わる
Testable Minds 研究参加者募集 心理実験、ブラウザ実験、本人性を重視する研究 参加者プールは大手より小さく、細かな条件では時間がかかる可能性がある
Toloka マイクロタスク、AIデータ 分類、評価、文章作成、データ収集、アノテーション 人を対象とする実験より、作業タスクの設計に向く
Clickworker アンケート、データ作成 市場調査、UX調査、分類、文章・画像関連タスク 学術研究専用ではないため、倫理審査や同意取得は研究者側で設計する
CrowdWorks・Lancers 国内クラウドソーシング 日本語アンケート、データ入力、簡単な分類や収集 研究参加者パネルではない。募集文、外部サイトへの誘導、個人情報の取得などは各社規約を確認する
調査会社・研究支援会社 条件付き募集、運営受託 日本人、高齢者、特定職業、会場実験、音声・映像収録 セルフサービスより費用と準備期間が必要。代わりに個別対応や有人管理を組み込める

オンライン実験ならProlificが最初の候補になりそう

Prolificは、研究参加者を募集するためのサービスです。論文のMethodsやParticipantsに「Participants were recruited via Prolific」と書かれていることも増え、MTurkの代替として最初に名前が挙がるサービスになっています。

公式サイトでは、40か国以上に30万人以上のアクティブ参加者がいると案内されています。300を超える事前条件から参加者を絞り込み、外部のアンケートや実験システムへURLで誘導できます。代表性を考慮したサンプルや独自のスクリーニングにも対応しています。

2026年9月時点の料金は、参加者への謝礼に加えて、学術機関・非営利団体が謝礼の33.3%、企業が42.8%のプラットフォーム利用料です。参加者への報酬は時給12ドル以上を推奨し、最低時給は8ドルに設定されています。

2023年にPLOS ONEで公開されたオンライン研究のデータ品質比較では、Prolificの参加者はMTurkなどと比べ、注意確認、指示への追従、自由記述、IPアドレスや位置情報の重複などの指標で良好な結果を示しました。

ただし、Prolificの参加者は米国、英国、欧州に比較的多く、日本在住者や日本語母語話者を細かな条件で集める用途では、必要人数がそろうか確認が必要です。二人一組の対話収録や、指定場所へ来てもらう実験も、通常のアンケート募集と同じようには進められません。

CloudResearch Connectも研究参加者募集に近い

CloudResearch Connectは、オンライン研究向けの参加者募集サービスです。CloudResearchはもともとTurkPrimeとしてMTurkを研究で使いやすくする仕組みを提供していましたが、ConnectはMTurkとは別の参加者プールを使います。

事前属性による絞り込み、参加者の品質管理、外部アンケートとの接続など、MTurkを研究に利用していた人が移行しやすい構成です。現在は公式サイトでも、MTurkの代替先としてConnectを案内しています。

料金は、参加人数、謝礼、所要時間、設定内容を入力して見積もる方式です。米国のオンライン調査では候補になりますが、日本人や日本在住者を対象にする場合は、参加者数と属性の内訳を先に確認した方がよさそうです。

本人が回答していることを重視するTestable Minds

Testable Mindsは、学術研究を中心とした参加者募集サービスです。身分証明書と顔写真による本人確認を行うVerified Mindsがあり、研究ごとの顔認証や不正な自動操作の検出を特徴としています。

ブラウザで実施する心理実験やアンケートに利用でき、対象者の絞り込み、独自スクリーニング、過去の参加者を使ったパネル作成にも対応しています。参加者への最低報酬は通常8ドル、本人確認済み参加者は12ドルの時給換算です。プラットフォーム手数料はプランにより参加者報酬の20~30%と案内されています。

本人性の確認は、生成AIやボットを避けたい研究では重要です。ただし、本人確認済みの人が自分で考えて回答したことまで自動的に保証されるわけではありません。設問の作り方、回答時間、操作記録、自由記述などを組み合わせて確認する必要は残ります。

アノテーションやAI評価ならToloka

Tolokaは、研究参加者募集よりも、AI開発用のデータ作成に近いサービスです。文章の評価、分類、生成、コンテンツ確認、データ収集などをタスクとして公開できます。公式サイトではMTurk終了後の移行先として、20万人以上の登録貢献者を案内しています。

タスクごとの支払いで、最低利用額や長期契約なしで始められるとされています。指示と品質基準を設定し、少量のサンプルで確認してから作業を広げる流れも用意されています。

MTurkで画像分類や文章評価を依頼していた場合は近い代替候補です。一方、人間の心理や行動を測る実験では、参加者募集を目的に作られたProlificなどとは分けて考えた方がよいでしょう。

Clickworkerは調査とデータ作成の両方を扱う

Clickworkerは、アンケート参加者募集、分類、テキスト作成、商品情報収集などを扱うクラウドソーシングサービスです。自社のアンケートツールを使う方法と、研究者が用意した外部アンケートへ参加者を送る方法があります。

公式の調査サービスでは、国、言語、年齢、性別などによる絞り込みや、重複回答を防ぐ品質管理を案内しています。謝礼は依頼者が設定できます。

学術研究にも利用できるとされていますが、研究倫理、説明と同意、除外基準、データの保管方法まで用意されるわけではありません。研究に必要な条件は、サービスの機能とは別に研究者が設計する必要があります。

日本人を集めるなら国内クラウドソーシングも候補になる

日本人や日本語話者を集めるだけなら、CrowdWorksやLancersでアンケート、分類、データ収集の作業者を募集する方法もあります。日本語で募集と質問対応ができ、国内の銀行振込や本人確認制度を利用できる点は海外サービスより扱いやすい部分です。

ただし、どちらも研究参加者募集に特化したサービスではありません。登録時の属性が研究用に検証されているわけではなく、過去にどの実験へ参加したかを研究横断で管理する仕組みもありません。外部サイトへの誘導、個人情報、医療・健康情報、音声・画像の提出については、募集前にプラットフォームの規約を確認する必要があります。

一件ずつ独立して答えられるアンケートや分類には使えても、二人一組の対話、複数日にわたる実験、会場への集合、機材の指定など、参加者同士や運営側の調整が必要な研究では管理工数が急に増えます。

どのサービスを使っても、指示書だけでは揃わない

画像にラベルを付ける作業でも、最初は簡単に見えます。ところが実際に始めると、「一部だけ写っている物を含めるか」「重なっている場合はどうするか」「判別できないときに何を選ぶか」といった例外が出てきます。文章評価や音声収録も同じです。

クラウドソーシングでは、研究者がこの判断を先回りして説明しなければなりません。説明が長すぎれば読まれず、短すぎれば作業者ごとに判断が変わります。不良データが集まってから、指示の曖昧さに気づくこともあります。

だからといって、受託会社へ依頼すれば最初からうまくいくわけでもありません。株式会社イングクラウドでも、研究者から仕様書を受け取るだけで、すぐに均一なデータを作れるとは考えていません。

少量を試作し、判断に迷った例を集め、研究者に確認してもらい、作業手順と見本を直してから本番へ進みます。本番中も質問、検品、差し戻しを繰り返します。研究者が持っている判断基準を、複数の作業者が同じように再現できる工程へ変えていく部分に、運営を外部へ依頼する意味があります。

代替先は集めたいデータから選ぶ

  • 海外の参加者によるアンケートやオンライン実験:Prolific、CloudResearch Connect、Testable Minds
  • 画像分類、文章評価、AI学習用アノテーション:Toloka、Clickworker
  • 一般的な日本語アンケートや単純作業:CrowdWorks、Lancers
  • 日本人の条件付き募集、音声・映像収録、会場実験:国内の調査会社や研究支援会社

MTurkの終了後も、人を介して研究データを集める必要がなくなるわけではありません。ただし、依頼文を掲載して回答を待つだけでは、誰がどのように作ったデータか分からない時代になっています。サービスの登録者数や料金だけでなく、本人確認、説明と同意、作業記録、質問対応、検品まで含めて収集方法を考える必要があります。

RESEARCH PARTICIPANT RECRUITMENT

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株式会社イングクラウドでは、日本国内の研究参加者募集、アンケート、対話・音声収録、画像収集、書き起こし、アノテーション、検品まで対応しています。年代、職業、経験などの条件がある募集や、二人一組の収録、会場での実験についても、実施方法と必要人数を確認しながら設計します。

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