AIは「空気を読む」ことができるのか|暗黙の文脈を学ぶデータの作り方

日本語の「大丈夫です」は、承諾にも断りにもなります。「検討します」が文字どおりの検討を意味する場合もあれば、直接断らないための表現になる場合もあります。

人が「空気を読む」と呼ぶ働きは、一つの能力ではありません。場面、関係性、感情、直前の出来事、社会規範を組み合わせ、表面に書かれていない意図を推測することです。

文章だけでは答えが決まらない

「もういいよ」という発話だけを見ても、満足、諦め、怒り、許可のどれかは分かりません。誰が誰へ、何の後に、どのような声で言ったかが必要です。

空気を読むための四つの情報

情報
状況 会議、家庭、接客、研究室
関係性 友人、上司と部下、初対面
感情 困惑、苛立ち、安心、遠慮
規範 その場で期待される振る舞い

どれか一つではなく、複数の情報の組み合わせによって解釈が変わります。

感情に寄り添う応答を集めたデータ

EmpatheticDialoguesでは、話者が感情を伴う出来事を書き、その内容を知らない聞き手と会話します。聞き手は場面から感情を推測し、共感的に応答します。

社会的な理由を推論するデータ

CICEROは、会話中の発話について「なぜそう言ったのか」「次に何が起きるか」などを推論するデータを収録しています。発話の表面ではなく、人物の動機や因果関係を扱います。

人の動機や次の行動を三択問題にする

SocialIQAは、日常的な社会状況から、人物の動機、感情、行動の結果、次に望むことなどを推論するデータセットです。文章中に直接書かれていない情報を、社会的な常識から補います。

正解だけでなく、自然だが質問には合わない誤答を人手で作り、AIが単語の特徴だけで解けない問題を目指しています。

自分の知識と相手の信念を分ける

空気を読むには、相手が何を知り、何を知らないかを追跡する必要があります。Theory of Mind系の問題では、登場人物が見ていない間に物が移動した場面などを使い、その人物がどこにあると信じているかを質問します。

現実の事実を答えることと、相手の視点から答えることを分けることで、AIが登場人物ごとの知識状態を扱えているかを確認できます。

遠回しな肯定・断りを場面ごとに集める

「参加できますか」に対する「締切が明日なんです」という回答は、文法上はYesでもNoでもありません。しかし、場面を読めば断りに近いと判断できます。

CIRCAは、Yes・No質問への間接的な回答を収集し、明確な肯定、条件付き、弱い否定などの意味を付けたデータセットです。話者の意図と、第三者が受け取った意味を分けて考える材料になります。

一つの正解へ押し込まない

暗黙の意図は、人間同士でも解釈が分かれます。多数決だけで一つの正解にすると、少数だが妥当な読み方が失われます。複数回答、確信度、判断理由、回答者属性を残す設計が重要です。

日本語のデータには日本語の場面が必要

英語データを翻訳しても、日本語特有の省略、敬語、婉曲表現、内と外の関係が再現されるとは限りません。日本語話者が実際に迷う場面を集め、どの情報を根拠に解釈したかを確認する必要があります。

IMPLICIT CONTEXT DATA

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場面文、ロールプレイ対話、感情・意図・関係性の複数人評価まで、研究目的に合わせて設計します。

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