公開データセットのライセンスをどう読む?CC BY・CC0・パブリックドメインの違い

Hugging Faceで公開データセットを探していると、CC BY 4.0CC BY-NC 4.0CC0PDMなど、似ているようで少しずつ違う表記が出てきます。

データをダウンロードできることと、そのデータを目的どおりに利用できることは同じではありません。研究で使えるのか、企業でも使えるのか、加工したデータを共同研究者に渡せるのか、学習用データとして再公開できるのか。私たちも公開データセットを調べたり、自社のサンプルデータを公開したりするなかで、その都度確認しています。

この記事では法律上の判断を示すのではなく、データを作る側・使う側として、ライセンス表記を読むときに確認していることを整理します。

2026年9月14日確認
ライセンスや公開元の利用条件は変更されることがあります。実際に利用する際は、データセットカード、配布元の利用規約、ライセンス原文も確認してください。

CC BY-NCの文字は何を表しているのか

CCはCreative Commons、BYは出典表示、NCは非営利を表します。末尾の4.0はライセンスのバージョンです。

表記 意味
BY 作者名や出典、ライセンスへのリンクなどを表示する
NC 利用を非営利目的に限る
SA 改変したものを公開するときも同じライセンスを引き継ぐ
ND 改変したものの共有を認めない

したがって、CC BY-NC 4.0は、出典を表示し、非営利目的に限ることを条件として、共有や改変を認めるライセンスです。Creative Commonsの公式説明では、適切なクレジット、ライセンスへのリンク、変更した場合の表示も求めています。

ここで悩むのが「非営利」の範囲です。大学の研究なら常に非営利、企業の研究なら常に営利と、所属だけで機械的に分けられるわけではありません。企業内の研究開発、受託研究、産学共同研究、有料サービスの性能評価など、判断に迷う利用方法では、公開元に目的を伝えて確認したほうが安全です。

よく見かけるCreative Commonsライセンス

表記 出典表示 商用利用 改変 主な注意点
CC0 法的な義務なし 権利を可能な限り放棄するための仕組み
CC BY 必要 出典、ライセンス、変更の有無を表示する
CC BY-SA 必要 改変物を公開するときも同じライセンスを適用する
CC BY-NC 必要 不可 利用目的が非営利に当たるか確認する
CC BY-ND 必要 改変物の共有は不可 加工・変換したデータを配布する用途には向かない
CC BY-NC-SA 必要 不可 非営利に加え、同じライセンスの継承が必要
CC BY-NC-ND 必要 不可 改変物の共有は不可 CCライセンスのなかでは特に制約が多い

表だけを見ると単純ですが、データセットでは「改変」が何を指すかが分かりにくいことがあります。ファイル形式の変換、欠損値の修正、文章の分割、画像の切り出し、翻訳、ラベル追加など、予定している処理を具体的にしたうえで条件を確認する必要があります。

パブリックドメインとCC0は同じではない

パブリックドメインとCC0は、どちらも広く自由な利用が想定されています。ただし、自由に利用できるようになった経緯が異なります。

パブリックドメイン CC0
位置付け 著作権による制限がない状態 権利者が権利を可能な限り放棄するための法的手段
主な理由 保護期間の満了、著作物に当たらないなど 権利を持つ人が自らCC0を適用する
出典表示 著作権上は原則として必須ではない CC0自体には表示義務がない
商用利用・改変 原則として可能 原則として可能

Creative CommonsのCC0 FAQによると、CC0は、権利者が著作権や関連する権利を法律上可能な限り放棄する仕組みです。権利放棄が有効にならない場合に備え、目的を限定しない広い利用許諾として働く規定も含まれています。

一方、PDMはPublic Domain Markの略です。権利者が権利を放棄するためのものではなく、すでにパブリックドメインである作品を示すために使われます。

整理すると、著作権の保護期間が満了した作品はパブリックドメイン、その状態を示すものがPDM、まだ権利を持っている人が自分の権利を可能な限り手放すために使うものがCC0です。

青空文庫では対象によって条件が違う

青空文庫を元に作られた日本語データセットを見かけることがあります。夏目漱石などの作品本文が自由に利用できるのは、青空文庫がCC0を適用したからではなく、著作権の保護期間が満了しているためです。

ただし、青空文庫で提供されているものをすべて同じ条件で扱えるわけではありません。青空文庫収録ファイルの取り扱い規準では、著作権の切れた作品ファイルについて、有償・無償を問わず複製、再配布、共有、形式変換などを認めています。

一方で、図書カードや書架情報はCC BY 4.0、作業マニュアルはCC BY-NC 4.0、注記一覧はCC BY 4.0です。作品本文、電子化されたファイル、書誌情報、作業マニュアルでは、それぞれ確認すべき条件が異なります。

翻訳作品にも注意が必要です。原作者の著作権が切れていても、翻訳者の著作権が残っていれば、その翻訳文まで自由に利用できるとは限りません。

国立国会図書館のデータセットで見かけるPDM

国立国会図書館が公開するNDL-DocLは、文書画像にレイアウト情報を付けたデータセットです。古典籍・近代資料の画像と、矩形領域やラベルを記録したXMLが収録されています。

NDL-DocLの公式リポジトリでは、著作権保護期間が満了した資料だけを収録し、権利表示にPDMを使用しています。加工した場合の明記、自由に二次利用できる旨の表示、論文でのデータセット名とバージョンの記載なども求めていますが、これらは法的な契約条件ではなく協力依頼であると説明されています。

研究上の出典表示は、ライセンス上の義務だけで決まるものではありません。PDMやCC0で法的な表示義務がない場合も、研究の再現性やデータの由来を残すため、データセット名、配布元、バージョン、取得日を記録しておくほうがよいと考えています。

なお、国立国会図書館が提供するデータがすべてパブリックドメインというわけではありません。NDLラボのデータセット案内にも、自由利用できる書誌データ、著作権が著作権者に帰属する国会会議録、提供館ごとの条件が適用されるレファレンス事例などが並んでいます。提供元の名称ではなく、データごとの条件を見る必要があります。

Hugging Faceのライセンス欄は確認の入口

Hugging Faceでは、データセットカードのメタデータにライセンスを記載できます。Hugging Faceの公式ドキュメントには、Creative Commons、Open Data Commons、CDLA、MIT、Apache 2.0、独自ライセンスなど、多数の選択肢が掲載されています。

ただし、データセットカードのライセンス欄にCC0CC BYと表示されているだけで、含まれるすべての素材について必要な権利処理が済んでいると保証されるわけではありません。ライセンスを選択しているのは配布者であり、第三者が持つ権利まで消すことはできないからです。

unknownやライセンス未記載の場合も、自由に利用できるという意味ではありません。条件が分からなければ、README、データセットカード、元データの配布元、関連論文を確認し、それでも分からない場合は配布者に問い合わせることになります。

一つのデータセットに複数の権利が重なる

データセットは、一つのファイルのように見えても、複数の素材と作業成果からできています。

構成要素 確認すること
元の文章・画像・音声 著作権、利用規約、撮影対象や話者の権利
収集したデータ 参加者の同意範囲、公開・再配布の可否
翻訳・文字起こし 元素材の条件と、新しく加えた表現
アノテーション ラベル定義、分類判断、作業成果の利用条件
データの選択・構成 収録対象の取捨選択や体系的な構成
変換プログラム MIT、Apache 2.0などコード側のライセンス

たとえば、パブリックドメインの小説を集めたデータセットでも、作品の選定、章や文への分割、現代表記への変換、感情ラベルの追加などが行われていれば、元作品の権利状態だけを見て判断することはできません。

反対に、データセット全体にライセンスが付いていても、写真に写った人物のプライバシーや肖像、音声収録時の同意、商標などは別に確認する必要があります。ライセンスは重要ですが、それだけですべての利用条件を説明するものではありません。

利用する前に確認していること

公開データセットを案件や研究で利用するときは、少なくとも次の点を確認します。

  • 誰がデータセットを公開しているか
  • 元データはどこから取得されたか
  • ライセンスはデータのどの部分に適用されるか
  • 商用利用、加工、再配布が認められているか
  • 出典、ライセンス、変更内容をどのように表示するか
  • 独自の利用規約や研究用途限定の条件がないか
  • 個人情報、肖像、音声、商標など著作権以外の問題がないか
  • 取得元、取得日、ライセンスのバージョンを記録したか

特に公開や再配布を予定している場合は、データを作り終えてから条件を確認するのでは遅いことがあります。研究参加者から新しく収集するデータなら、公開範囲や第三者提供を同意文書へ入れておく必要があります。外部データを利用するなら、収集を始める前に、予定している加工と公開方法が条件に合っているかを確認します。

ライセンス名だけでなく、データの由来を残す

CC BYCC0かを選ぶことは大切ですが、利用者にとっては、どのようなデータを、どこから集め、どのように加工したかも同じくらい重要です。

データセットカードやREADMEには、元データ、収集方法、同意範囲、加工内容、除外したデータ、アノテーション方法、既知の限界、ライセンスの適用範囲を残しておく。そうすることで、利用者が自分の目的に使えるかを判断しやすくなります。

私たちもサンプルデータを公開する際は、ライセンスを一つ選んで終わりにせず、データの構成と作成経路を説明できる状態にしておく必要があると考えています。

RESEARCH & AI DATA SUPPORT

研究・AI開発用データの制作についてご相談いただけます

株式会社イングクラウドでは、研究参加者募集、音声・対話収録、画像収集、書き起こし、アノテーション、データセット制作に対応しています。公開や共同利用を予定するデータについても、収集時の同意範囲、匿名化、データ構成、納品形式を確認しながら進めます。

学術研究・実証実験支援について相談する