研究・AI用データを個人から集めるとき、同意事項には何を書くべきか

研究参加者から顔画像、音声、回答データなどを集めるとき、毎回悩むのが説明と同意の範囲です。同じ音声収録でも、研究機関だけで利用する場合と、学会発表で再生する場合、データセットとして一般公開する場合では、参加者へ伝える内容が変わります。

重要なのは、「収集への同意」「第三者への提供」「一般公開」を一つにまとめないことです。この記事では、研究・AI用データを個人から収集するときに、事前に整理したい項目を実務の観点からまとめます。

2026年9月15日確認
本記事は一般的な確認項目を示すもので、同意書や契約書の法的有効性を保証するものではありません。研究分野、所属機関の倫理審査、収集する情報によって追加対応が必要です。

最初に利用の段階を分ける

段階 参加者に説明する内容
収集 何を、どの方法で、どれくらい収集するか
研究・開発での利用 何の目的で分析・学習・評価するか
委託先での取扱い 収録、書き起こし、検品などを誰が行うか
研究機関・発注者への納品 誰にどの形式で提供するか
成果の発表 論文、学会、報告書でどのように利用するか
データ自体の公開 不特定多数が取得・再利用できるか
将来の二次利用 今回とは別の研究や商用開発にも利用するか

研究結果を統計として論文に掲載することと、参加者の顔画像や音声を公開データセットとして配布することは同じではありません。後者では、公開範囲、再配布、商用利用、国外からの利用なども検討する必要があります。

最低限整理したい10項目

  1. 収集するデータ:画像、動画、音声、書き起こし、回答、属性など
  2. 利用目的:研究課題、AI学習、性能評価、教材作成など
  3. 提供先:大学、共同研究機関、企業、作業委託先など
  4. 加工内容:切り出し、匿名化、書き起こし、ラベル付けなど
  5. 公開範囲:非公開、研究者限定、申請制、一般公開など
  6. 利用条件:研究限定、商用利用可、再配布可など
  7. 保管期間:原本、対応表、公開用データをいつまで保持するか
  8. 撤回・削除:いつまで、どの範囲なら対応できるか
  9. 謝礼と権利:参加対価、著作権、肖像・プライバシーの扱い
  10. 問い合わせ先:研究責任者、収集事業者、苦情窓口など

データの種類だけで同意範囲は決まらない

顔写真は慎重に扱う必要がありますが、「声だけなら簡単」「アンケートなら安全」とは限りません。自由会話には本人や家族の情報が含まれることがあり、アンケートでも希少な属性の組合せから本人を推測できる場合があります。

反対に顔画像であっても、利用者を限定し、目的を限定し、対応表を厳格に管理する設計もあります。データの種類、識別可能性、利用目的、提供範囲を組み合わせて考えます。

顔写真を集める場合

顔写真では、次の違いを明確にします。

  • 人が画像を見るだけか、顔認識や特徴量抽出に使うか
  • 研究機関内だけで利用するか、他機関へ提供するか
  • 論文に顔画像を掲載するか
  • 元画像をデータセットとして公開するか
  • AIモデルの学習、評価、なりすまし検知などに使うか
  • 加工・合成・特徴量化したデータを残すか

顔画像から抽出した顔特徴データを本人認証に利用する場合などは、元画像とは別の論点も生じます。顔識別機能付きカメラに関する考え方は、個人情報保護委員会の資料も参考になります。

音声を集める場合

音声では、声だけでなく発言内容も確認します。定型文の読み上げと自由会話では、含まれる情報や権利が異なります。

  • 話者認識・声紋認証への利用を想定するか
  • 音声と書き起こしの両方を利用するか
  • 固有名詞や私生活上の発言をどう処理するか
  • 音声そのものを公開するか、特徴量だけを利用するか
  • 音声合成や声質変換への利用を含むか

撤回できる期間を現実的に説明する

「いつでも削除できます」と約束しても、すでに論文が公開された、第三者がデータセットを複製した、学習済みモデルへ反映された、といった段階では完全な回収が困難です。

そのため、募集終了前、研究機関への納品前、一般公開前など、撤回に対応できる期限と範囲を具体的に示します。できないことまで約束しないことが、参加者への正確な説明になります。

研究目的を詳しく説明できない場合

研究上の仮説を知らせると結果へ影響する場合や、発表前の研究内容を公開できない場合があります。それでも、参加者が提供を判断するために必要な情報まで省略してよいわけではありません。

具体的な仮説を伏せる場合でも、収集する内容、想定される利用、提供先、公開の有無、リスク、撤回方法は説明します。必要に応じて、調査終了後に本来の目的を説明する方法も研究機関と検討します。

同意書だけでなく実際の運用を合わせる

文章上は匿名化すると書かれていても、ファイル名に氏名が残っていたり、研究用データと応募者名簿が同じフォルダに保存されていたりすれば、運用として不十分です。

説明文、同意項目、収集フォーム、保存先、公開用データの作り方を一続きで設計します。研究機関、収集事業者、アノテーション担当者のうち、誰がどの情報へアクセスするかも先に決めておくと混乱を防げます。

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株式会社イングクラウドでは、研究参加者の募集、説明・同意の運用、音声・画像収集、匿名化、アノテーション、検品まで、研究者と確認しながら設計します。

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